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システム開発

2025.03.19

履けば履くほど賢くなる靴 – AI技術で歩行を解析するスマートシューズが熱い

BALISTONというAI搭載のスマートシューズがスゴい!

この靴、何がスゴイって、靴の中に30種以上のバイオメトリクス情報を収集する高性能なセンサーが埋め込まれていて、データを収集・AI解析することで「Walking DNA」なるものを解析できてしまうところにあります。

 

バイオメトリクス情報は、具体的には、歩行の対称性、プロネーション、スピネーション、踵への衝撃、歩行速度、階段の上り下りなどがあるそう。

 

これらを解析して「姿勢」や「歩き方」に関する洞察や改善提案を提供してくれます。

 

さらに、「Walking Quality(歩行の質)スコア」は歩行効率や疲労度を点数化したもので、スコア向上のための具体的なアドバイス(「姿勢を15〜20メートル先を見るようにまっすぐ保つと歩幅が広がります」等)も提示されます。

 

また「Pain-Focused Insights」という機能では、足や腰への負担を分析し、痛みの原因となりうる動作の癖を特定・改善するヒントを与えてくれます。

 

さらに、ユーザー個々の歩行パターンに合わせた「カスタムインソール(オルソティクス)」を提案・提供する機能もあり、歩行データに基づいて最適な足底サポートを実現するなど、分析結果を実際のフィジカルなソリューションにつなげている点も革新的です。

 

この一期通関したUXすごくないですか!?

 

心拍数や睡眠と並んで歩行は第6のバイタルサイン

BALISTONは、「歩行を第6のバイタルサイン(生命兆候)と捉える」というコンセプトでプロダクトを開発しているようです。

 

近年、医療・フィットネス分野では「心拍数」や「睡眠」と並んで「歩行の質や安定性」が健康状態の重要な指標とみなされ始めています。BALISTONはこのトレンドを先取りし、AIによるデジタルバイオマーカーとしての歩行解析を一般消費者にまで広げました。

 

ウェアラブル技術と機械学習の進歩により、日常生活の中で得られるデータから個人ごとの健康リスクを早期発見・介入する試みが盛んですが、BALISTONは足元からそれを実践しようとしている点でユニークです。

 

他社の事例では、主にランニングのフォーム矯正やパフォーマンス計測に特化したもの(例:Under Armourのランニングシューズのチップ、ランナー向けインソールなど)が多いです。

 

それに対して、BALISTONは「医療分野で蓄積した知見」を背景に持つため、「歩行解析のアルゴリズムが臨床グレード」である上、そこで得た洞察を「ユーザー個々の生活改善アドバイス」や「用具(インソール)提案」にまで落とし込んでいる点が優れています。

 

言わばハード(靴)とソフト(AIデータ分析・アプリ)とサービス(インソール提案・交換)が統合されたエコシステムを構築しています。

 

履けば履くほど賢くなる靴

BALISTONのスマートシューズおよびアプリは定期的にソフトウェアアップデートが提供され、新たな分析指標や機能が追加されていきます。いわばスマートフォンや電気自動車のように履けば履くほど賢くなる靴であり、購入後もAIアルゴリズムのアップデートによってサービス価値が向上するモデルです。

 

専用センサーモジュール「MovScan™」は片足わずか7グラム程度と小型ながら、1秒間に複数回の頻度で足の動きを検出し、リアルタイムでモーションデータを収集します。蓄積されたデータはBaliston独自の「AIモーションライブラリエンジン」で解析されますが、このエンジンには「2億歩分以上の歩行データ」が学習されており、30件以上の関連特許に支えられています。

 

その結果、靴に内蔵された小さなデバイスでありながら、「従来は専門の歩行分析ラボやモーションキャプチャシステムでないと得られなかった精密な歩行計測(95%の高精度)を実現」しています。

 

足そのものにセンサーを置くことで、手首や指のデバイスでは捉えきれない詳細な歩行の癖・バランスの乱れを検知できます。

 

実際、このプラットフォームは学術ジャーナル『Sensors』などで査読付き論文として精度検証が報告されており、従来型の光学式歩行分析システムを上回る有用性が示されているそうです。

 

AI搭載のスマートシューズで健康寿命は伸ばせるか?

スマートシューズは、日常の歩行データを詳細に解析することで、健康管理やリハビリテーションのサポートに役立ちます。例えば、歩行の対称性や安定性、足圧のかかり方、重心移動などをモニタリングすることで、姿勢の改善や怪我の予防に繋がります。

 

また、医療分野では、糖尿病患者の足の状態をモニタリングし、足潰瘍の早期発見や管理に役立てる取り組みも進められています。さらに、高齢者の転倒リスクを評価し、予防策を講じることで、健康寿命の延伸に寄与する可能性があります。

 

足元から始まる健康管理。AIとセンサリング技術とアイデアで、健康寿命に寄与できる良い事例だと感じました。